ところで突然歌をやめるのは、どうにもたまらない。

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 この詩集の作品は、家の中で一番よい部屋を書斎にして書かれたものである。そして、子供の笑ひ声や泣き声をうるさいとどなつたりしたのだつた。三年前の生活を思ひ出すことはかなり恥ず[#「ず」に「ママ」の注記]かしい。そして、自分の作品がそれほどのかち[#「かち」に傍点]があるかどうかを考へることはかなりさびしい。

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「軍艦茉莉」安西冬衛はすばらしい詩集を出した。去年の暮は、草野心平が「第百階級」を出した。
 どうすればよい詩が書けるか。といふことの方が、詩型のことや形式のことなどよりもはるかに詩作者にとつて大切ではなからうか。
 今朝も鶯が庭へ来てゐた。桐の葉がのびた。ノミが子供をせめ初[#「初」に「ママ」の注記]めた。
[#地付き](詩と詩論第四冊 昭和4年6月発行)



底本:「尾形亀之助詩集」現代詩文庫、思潮社
   1975(昭和50)年6月10日初版第1刷
   1980(昭和55)年10月1日第3刷
初出:「詩と詩論 第四冊」
   1929(昭和4)年6月
入力:高柳典子
校正:鈴木厚司
2006年9月12日作成
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