になったつもりで、外へ出かけるのにも黙って出るようになりました。たまには、夜おそくなってから帰って来るようなこともありました。
 ある日、モーティは、朝早くからお坊ちゃまと一しょに出かけたきり、夜になっても帰って来ませんでした。その日は、陸軍の大演習で朝から晩まで飛行機が、とんぼのように空を飛びまわっていましたので、誰《だれ》でもお家にじっとしていられないような日でした。ですから、モーティも、そんなことで夢中になっているのだろうと思っていましたが、あくる日になっても、まだ帰って来ませんでした。
 二人の自動車は一晩中寝ずに待っていました。ピリイは、あんまり泣いたもので、放熱器《レディエイター》の水がすっかりなくなってしまいました。で、ひどく頭がほてって、怒《おこ》りっぽくなってしまいました。次の日ピリイに乗ってお出かけになった奥さまは、行く先々でピリイの頭へ、バケツに何ばいも何ばいも水を、ぶっかけなければなりませんでした。
「いつも、おとなしい車なのに、今日は、どうしたんでしょう。ちょっとしたことにもすぐに、湯気をシュッシュッとふき出して、じきに放熱器《レディエイター》の水が乾《かわ》
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