うとう二人は、探しくたびれ、いつとはなしにあきらめてしまいました。
三
ところが、ある朝のことです。
車庫の扉《とびら》かギイッと開《ひら》いたと思うと、門番の人が一台の小さなオートバイを持ちこみました。それは二人とも今までに見たこともないような、赤塗りのきれいな車でした。それは、たしかに有名な会社で出来た、りっぱな子供用のオートバイでした。
ピリイは、二つのランプを眼のようにパチパチと光らせ、放熱器《レディエイター》からは、嬉《うれ》し涙をポトポトと落しました。
「お前さんは孤児なの。え、そうでしょう。ね、オートバイちゃん。」ピリイは急《せ》ッこんで聞きました。
「え? ――ええ、そうです。おばちゃん。」
オートバイは可愛《かわい》い声で言いました。そう言わないと、何だか、おばさんが、がっかりしそうだということが、はっきり分ったからです。――「孤児」というのは何のことだかオートバイには、ちっとも分らなかったのですけれど。
「今のを聞いて? ポピイ。」ピリイは、こおどりして言いました。「この子は孤児なんですって。」
「どうだい、お前は、私たちの養子になってく
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