帽子がポンと飛びました。それでも、はッと思う間もなく、またヒョイと帽子が、もとの通り、御主人の頭にかぶさったのは仕合せでした。
ポピイは、つぎはぎだらけのタイヤが、ペシャンコになったのもかまわず、びゅうびゅうと赤オートバイの後をつけました。今度は公園です。曲りくねっている道が、じれったくてたまらないので、ポピイはまん中の大きな池へザブンと飛びこみました。ポピイは、そのまま水の中をザブザブとまっすぐに駈《か》けぬけて、電車通りへ飛び出しました。赤オートバイは、また、チラチラと、うしろを見せながら人ごみへ隠れてしまいました。ポピイは、もう夢中です。走って来る電車の前をすれすれに走りぬけたり、もう少しで満員の乗合自動車と衝突しそうになったり見ていてもハラハラするようです。歩いている人たちは、あわてて、道の両側にある店の日除《ひよ》けの下へ逃げこんで、びっくりしてあとを見送っていました。それよりも、おどろいたのは御主人です。
「助けて下さい。誰《だれ》か、この自動車をとめて下さい。」
ハンドルを、しっかりと握りながら、御主人は真青《まっさお》になって叫びました。交通巡査は、すぐに黄色いオー
前へ
次へ
全14ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
木内 高音 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング