の店でも何でも探《さが》して見よう。……なに、きっと見つかるよ。」
ポピイは、つけ元気をして、こう言いました。
「しかし、あんな、やんちゃなモーティのことだ。ことによると、悪い仲間にさそわれて、警察にでもつかまってるんじゃアないかな。」
ポピイが言いますと、ピリイは、心の中では、そうかも知れないと思いながら、やっぱり打消さずにはいられませんでした。
「いいえ、やっぱり私は盗まれたんだと思いますわ。――ねえ、あなた、一つ新聞に広告をして見ようではありませんか。」
そこで、モーティを見つけて下すった方には、お礼をするという広告をいくつかの新聞に出しました。しかしちっとも、てがかりはありませんでした。返事は、ずいぶん来るには来たのですが、みんな見当ちがいのいい加減なものばかりでした。二人は、また、がっかりしてしまいました。
六
その内に、ポピイは、いよいよ御主人のおともをして、下町へ出かけました。今日《きょう》こそは、どうしてもモーティを見つけなければならないと思って、ポピイは一生けんめいです。オートバイらしいものがあるとポピイはランプの眼をくりくりさせて見すえました。すると、ふいに、一町ばかり先を赤いオートバイがちらッと通りました。あっと思う間に、そのオートバイは横丁へ曲ってしまいました。ポピイは気ちがいのようになって後を追いました。どうしてもモーティにちがいないと思ったからです。乗っていた御主人は、びっくりして、車を返そうとしましたが、てんでハンドルがききません。
ポピイは御主人の行く先などは、すっかり忘れてしまって、いきなり、その横丁へ飛びこみました。赤いオートバイは、もう、また向うの町角を曲るところです。ポピイは、このへんの道をよく知らないものですからよけいにあせりました。見失ったら、もうおしまいです。ポピイは、死にもの狂いになりました。角を曲ると、赤オートバイは、向うの坂の下に小さく豆粒のように見えます。ひどいデコボコの坂です。それでもかまわずポピイは全速力で走りました。年を取っているポピイの体《からだ》は、石ころなどに乗り上げるたんび、ばらばらになるのではないかと思うほど、ひどく揺れました。でも、ポピイは、そんなことには構っていられません。しかし困ったのは御主人です。御主人の体はポンポンとゴムまりのように飛び上りました。その拍子に
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