ー》からポトポト涙を流したりして、言いつづけるものですから、ポピイは、しまいには、ピリイが、ものを言うのを止《や》めてくれさえしたら、何でも言うなりになろうと思ったほどです。そこで、とうとう二人は、何でも、これから、小さな可愛らしい孤児の自動車を見つけたら、すぐに養子にすることにきめました。

        二

 ピリイは、もう、かなり年をとっていました。放熱器《レディエイター》は、こわれかけてガタガタになっているので、すぐに頭がほて[#「ほて」に傍点]って、大へんに気が短かくなりました。ポピイも、また、やっぱり年のせいで、ちょいちょいタイヤが痛むので弱っていました。
 でも、二人は、それは品のいい、やさしい自動車だものですから、自分のことは忘れて、いつでも可哀そうな孤児をもらうことばかり考えていました。で、外へ出るたんび、公園だの、貸自動車屋の車庫だの、しまいには、こわれた自動車たちが、雨や風に吹きさらしになっている、汚《きた》ない裏町の隅々《すみずみ》までも探《さが》しまわりました。しかし、ちょうど養子になりたがっているような小さな自動車は、なかなか見つかりませんでした。
 とうとう二人は、探しくたびれ、いつとはなしにあきらめてしまいました。

        三

 ところが、ある朝のことです。
 車庫の扉《とびら》かギイッと開《ひら》いたと思うと、門番の人が一台の小さなオートバイを持ちこみました。それは二人とも今までに見たこともないような、赤塗りのきれいな車でした。それは、たしかに有名な会社で出来た、りっぱな子供用のオートバイでした。
 ピリイは、二つのランプを眼のようにパチパチと光らせ、放熱器《レディエイター》からは、嬉《うれ》し涙をポトポトと落しました。
「お前さんは孤児なの。え、そうでしょう。ね、オートバイちゃん。」ピリイは急《せ》ッこんで聞きました。
「え? ――ええ、そうです。おばちゃん。」
 オートバイは可愛《かわい》い声で言いました。そう言わないと、何だか、おばさんが、がっかりしそうだということが、はっきり分ったからです。――「孤児」というのは何のことだかオートバイには、ちっとも分らなかったのですけれど。
「今のを聞いて? ポピイ。」ピリイは、こおどりして言いました。「この子は孤児なんですって。」
「どうだい、お前は、私たちの養子になってく
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