》の光が、さっと、ガラスまどを通して、貨車《かしゃ》の内部《ないぶ》へさしこんだ。その貨車にはちょうど、石狩川《いしかりがわ》でとれたさけがつみこんであったので、自分は、キラキラと銀色《ぎんいろ》に光るうろこの山を予想《よそう》したのだったが、ランプの光は、ただ、ぼんやりとやみの中にとけこんでしまって、なんにも見えない。おかしいなと思ったので、自分は、立ち上がってガラスまどに鼻《はな》をつけるようにしてのぞきこむと、おどろいた。さけの山は、乱雑《らんざつ》にとりくずされ、ふみにじりでもしたように、めちゃめちゃになっているのだ。
さけがぬすまれるということは、その季節《きせつ》にはよくあることなので、自分は、さけどろぼうが貨車《かしゃ》の中まであらしたのかと思うと、思わず、むッとして、手荒《てあら》く仕切《しき》りの車戸《くるまど》をひきあけて、足をふみこんだ。もちろん、まだどろぼうが貨車の中にぐずついていようとは思わなかったけれど、用心《ようじん》のために、そばにあった信号旗《しんごうき》のまいたのを、右手に持ち、左手にランプを高くさし上げて、用心|深《ぶか》く進《すす》んだ。
車
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