に一面に光っている。賽の河原から高倉の裾を廻るころ、東向きの雪がスキーにつき始めたので十五分ごとに先頭をかえて進んだ。高倉の裾をまわり切って、三段になったその頭をふりかえりながら進むと、谷に製板所の屋根が見えた。まっ白い兎が驚いて逃げて行った。もう十二時をちょっとまわっている。行手に高湯の賽の河原が見えるがまだよほどあるらしい。深い沢や谷が幾つもその間に横たわっている。行手を急ぐ身は、立ちながらパンを二片ほおばった。青き空の下に、輝く白い山々を見ていると、頭になにもない。ふだんから無い癖にといってくれるな。ふだんは腐った脳みそが入っている。万事は自然にゆだねた気持ちになるんだ。人間を信じない間ぬけな男に、これほど頭のさがる感じはない。暖かく心持ちよくスキーはシューシューと雪の上を行く。雪の下を流れる小川の水は非常にきれいだ。可愛らしい小川だ。谷を一つ越すと思わぬところに家が十軒ばかりあったが、どの家も、どの家も、雪が住んでいるばかりだ。やっと一軒人の住んでる家を見つけて道を聞いた。ここは青木山というところだそうだ。高湯へこの先の深い沢を越せば、たいしたこともないらしいという。だいぶ偉い
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