わったので、みんなが飯を食う時分にもまだ床の中でしょげている。やっと坊城が普通の眼鏡を貸したので床を出た。この眼鏡だとだいぶ人間に近づいて見える。人間らしいまでにはまだ行かない。西洋人がきたというので小林と途中まで迎えに行って見ると下の方から雪の中を登ってくる。昨日つけた崖のスキーの跡は今日の雪でけされた。自然にあってはかなわない。二番目の英人らしいのに Is there any Japanese? といったら、Down below? ときた。うまいことをいいやがる。英国人は英語がうまい。今日は宿の前で滑った。今日きた異人は独二人、英二人だ。盛んにドイツ語の会話をやるがなかなかうまいもんだ。ドイツ語はもっとごつごつするかと思ったらまるで英語のようだ。冠詞が一格だか二格だか考えずに出るからドイツ語はドイツが本場だと見える。一時頃小林が帰るので小池と坊城と板倉で送って行く。小林が先で林をぬけて雪の降りくる中を滑って行くのは見ても気持ちがいい。四町の道を一気にすべって順次に三人が止まると「それでは失敬」と帽子をとる。一人別れてすべって行く小林の後ろ姿を雪が降りしきっている。一人へってもだいぶ
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