は猶進取の政略を取り、政府万能主義の実行者にして、頻《しき》りに勧業の事に心を用ひしかば上の好む所下之より甚《はなはだ》しき者ありて地方官の如きは往々民間の事業を奪ひて之を県庁の事業とし以て大官に諂《へつら》はんとする者あり。経済雑誌は斯《かく》の如き時に於て起てり。其批評的、破毀的《はきてき》の議論は善く其弊害を鑿《うが》ちしかば天下は勢ひ之を読まざるを得ざりき。是れ其理由の二也。
田口君の著述として文学史に特筆せらるべきものは彼れの日本開化小史なり。明治政史の一大段落なる西南乱の未だ発せざる頃当時猶|孱弱《せんじやく》なる一青年の脳髄に日本の文明史を書かばやてふ一大希望ぞ起りける。彼れは大胆にも其事業に取り掛かれり、而して間もなく日本開化小史世に出でたり。記憶せよ、此有味なる、其模型に於て新しき、歴史は実に斯の如くにして出たりき。
吾人は日本開化小史に就て幾多の欠点を見たり。而れども是れが青年田口の作なりしことを思ひ、吾人が猶田舎に於て紙鳶《たこ》を飛ばし、独楽《こま》を翫《もてあそ》びつゝありし時に於て作られし著述なることを思へば非難の情は愛翫の情に打勝れざるを得ず。而して是
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