一のうつくしい女になったと安心していましたので、あるとき鏡《かがみ》の前にいって、いいました。
[#ここから1字下げ]
「鏡や、鏡、壁《かべ》にかかっている鏡よ。
 国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
[#ここで字下げ終わり]
 すると、鏡が答えました。
[#ここから1字下げ]
「女王《じょおう》さま、ここでは、あなたがいちばんうつくしい。
 けれども、いくつも山こした、
 七人の小人の家にいる白雪姫《しらゆきひめ》は、
 まだ千ばいもうつくしい。」
[#ここで字下げ終わり]
 これをきいたときの、女王さまのおどろきようといったらありませんでした。この鏡は、けっしてまちがったことをいわない、ということを知っていましたので、かりうどが、じぶんをだましたということも、白雪姫が、まだ生きているということも、みんなわかってしまいました。そこで、どうにかして、白雪姫をころしてしまいたいものだと思いまして、またあたらしく、いろいろと考えはじめました。女王さまは、国じゅうでじぶんがいちばんうつくしい女にならないうちは、ねたましくて、どうしても、安心していられないからでありました
前へ 次へ
全25ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング