て、火事盗難なぞの過ちがありがちでのう。
頭取 へいへい合点でござりまする。
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(二人左右に別れる。下手の出入口から、丁稚を連れた手代風の男が入って来る)
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手代風の男 (頭取を呼びかけて)ああもしもし。藤十郎様のお部屋はどこでござりまするか。
頭取 どちらからじゃ。お部屋はすぐここじゃが。
手代風の男 四条室町の備前屋の手代でござりまする。
頭取 おお室町の大尽のお使いでござりまするか。さあ! お通りなさりませ。左から二つ目の部屋じゃ。
手代風の男 なるほどな、梅鉢の紋が付いておりますのう。
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(手代風の男、藤十郎の部屋へはいって行く。藤十郎の部屋のすぐ隣から、大経師以春に扮した中村四郎五郎と召使お玉に扮した袖崎源次とが出て来る)
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四郎五郎 (源次の袖を捕えながら、ちょっと所作をして)どうも、お前にじゃれかかるところが、うまく行かぬのでのう。今日は三日目じゃが、まだ形が付かぬでのう。昨日藤十郎どのに、
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