もかすかに、うなずいた。
「貴女だって、悪人じゃないんでしょうから、こんな見えすいたことまで、かくしはなさらないわけね。じゃ、お訊きするわ……」と、夫人はさも軽蔑したような調子に変り、「私と主人との間には、今までは何の秘密もなかったんですのに、私に全然|内証《ないしょ》で、主人が貴女の世話をしているなんて……。一体、貴女は主人の何なんですの!」と、冷静を装っている夫人の眼も、さすがに光った。新子は、懸命な努力で、
「前川さんと私、何でもございません。ただご親切にいって下さるもんですから、この店で勤めさせて頂いているだけですの……」と、いった。
「そう! じゃ、貴女は雇人ですの。でも、雇人の貴女が、、こんなハイカラなべッドや、立派な鏡台を持っているんですの……」と、夫人はまず、鋭い皮肉を浴せておいてから、「南條さん、貴女は、口では綺麗なことばかりおっしゃるけれど、貴女と私達一家とは軽井沢でご縁が切れているはずでしょう。それだのに、なぜ主人と交渉を……しかも並々ならぬ交渉をお持ちになっているんですか。しかも、妻たる私に、内証に。それが、私には不可解なのですよ。貴女が、最初から私と、何の面識
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