のですから、行きもしなければ、それについて、訊ねも致しませんの。ただ、銀座裏とだけは、聞いておりますの。」と、相手にバツを合わせながら答えた。夫人は、さり気なく、
「じゃ、お帰りになりましたら、貴女私にお会いになったということは、どなたにも内証にして、そこがどんな筋合のバーだか、前川も時々行くのかどうか、調べて下さいませんか。そして、私にも知らして下さいません? 私、主人をからかってやりたいんですの。私新子さんを酒場《バー》になどご紹介するの、怪《け》しからないと思いますから、証拠を掴んでおいて、たしなめてやりたいと思いますの。その上で、主人にすすめて、主人の会社にでも、ちゃんとお世話するように、申しますわ。私、新子さんは、ちゃんとした方で、充分働きのある方だと、思っていますのよ。あんな落着いた、かしこい方、職業婦人などには、もって来いですわ。」と、口ではそう云いながら、さすがの夫人も、一切自分には秘密で、新子をバーになぞ入れたりしている前川のことを考えると、勝気なだけに、かえって、口惜《くや》しさで、胸がふるえて来るのだった。だからさっきから続けていた愛想笑いが、急にゆがんで、いい気
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