な知合いの奥さまやお嬢さまなので、その人達と無駄話をしてから、連れがないので、この次の「三社祭」を見たら、銀座で買物でもして帰ろうかと、大分|味気《あじき》ない顔付で、パーラーの方へ戻って来ると、思いがけなく、木賀子爵が独りで、綺麗な婦人達の中で、紅茶を飲んでいた。
「あら、貴君《あなた》見えていたの……」
夫人は、たちまち賑やかな笑顔で、近づいて行った。
四
引き受けた切符が、あり余っていたので、木賀の妹達には、送っておいたのだけれど、ハイカラの妹達も、来はしないだろうと思っていたのに、木賀が来ているので、夫人は驚くとともに、急にうれしくなった。
「貴君がいらしっているとは思わなかった。……主人を誘わなくって、よかったわ。」夫人はちょっと体裁のよい嘘を云った。そして、
「よっぽど、貴君暇なのね。」とからかった。
「いや、あるお嬢さんの踊りをちょっと見たかったから……」
「どなた……」と、夫人はプログラムを拡げた。
「(四季)の中の春を踊った人。」
「知らないわ。今来たばかりですもの。もう、大きい方でしょう、年の……」と夫人はからかうような眼差《まなざし》で、木賀を見上げた。
その時、開幕のベルが鳴った。
「じゃ、貴君もご用が済んだし、私もお義理を果してしまったんだからこれを見たら、一しょに出ましょうか。銀座へ、一しょに行ってほしいわ。」
「ええ。お供しましょう。僕は、もう出てもいいんですよ。」
「だって私来たばかりで、帰っちゃ少し、可笑《おか》しいわ、この踊りが終ってからにしましょう。これが済んだら、貴君勝手に出て、私の自動車の中で待っていて頂戴!」と云って、二人はぞろぞろ座席へ行く、人混《ひとごみ》の中で別れた。
やはり小さい子供達同士の「三社祭」の悪玉、善玉の踊りが終ると、夫人はサッサと退場して自分の自動車へ行ってみると、木賀はもうとっくに乗っていた。
自動車が、山下門の方へ動きかけると、夫人は小声で、
「春を踊った人、岸田千枝子と云ったわねえ。どこのお嬢さん?」
「いや、ちょっと……」
「おかしいわねえ。その人の踊りをわざわざ見に来るなんて! だから、逸郎さんは、近頃私のところへなぞ、寄り付かなくなったんだわ。」
「いや、そんな訳じゃないんですよ。ちょっと、縁談のある相手ですが、僕はもちろん断るつもりでいるんですが、仲人が、内山
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