姉さんと三人で、話をしたいって云ってらしったんだから、ちょうどいいわ。ねえ、いい機会だわ。あたし痩我慢ってことが、一番きらいだわ。あたし、潔《いさぎよ》く退却するわ。お姉様達二人で、仲直りなさいよ。」
 年も行かぬ、打見《うちみ》には子供らしい美和子だったが、その笑い方と云い、言葉と云い、涙ぐんで、ゴタゴタ云っている美沢や姉を憫笑《びんしょう》し、しらじらしく眺めているというような、底知れない大胆さが含まれていた。
「美沢さんもお姉さまが思い切れないし、お姉様だって、痩我慢で超然として、いらっしゃるなんて、可笑《おか》しいわ。美和子如き問題じゃないわ。バツが悪かったり、つまらない意地を張ってるなら、美和子が握手さしたげる……」と、顎にかかっている美沢の手を、いきなり左の手で掴みかかるのを、美沢はかるくふり払うと、それをキッカケのように立ち上ってしまった。
 美沢の態度が、唐突《とうとつ》だったので、新子もハッとなって立ち上った。
「さよなら、美和子さん、僕は君とはもう会わないよ。いいだろう。それから、新子さん、貴女とも、もう会う必要はありませんね。」
 美沢の顔は、能面のように、無表情であった。
「いいわ。結構よ。」美和子は、亢然《こうぜん》と、それに答えると、一散に奥へ走って行った。
 新子は引き止める口実もなく、何もいうこともないのに、このまま別れるのが、何となく悲しく、別れるにしても、お互に心をいたわりながら別れたいと思うと、今五分でも十分でも、話がしたく、ズンズン扉口の方へ歩き去る美沢の後を追うて、横飛《よこっと》びに戸外へ飛び出すと、男の足早く、もう五、六間も歩き去っていた。
「美沢さん! 美沢さん!」四辺《あたり》を気がねしながら、呼んでみたが、美沢は痩せた肩を、聳《そび》やかしながら、後もふり返らず歩きつづけた。
「ちょっと! ちょっと!」新子も、小走りに後を追いかけたが、美沢はそこの四つ角へ出ると、駐車場の円タクの一つに、相場も定《き》めず、
「まあ!」と、駭《おどろ》く新子を尻目に、飛び乗ってしまった。

        二

 美和子は、姉と美沢とが、前後して戸外へ飛び出してしまうと、美沢とこのまま別れてしまうことが、何となく劇的で、かえって胸の轟くような亢奮《こうふん》を覚えて、彼女らしく激しい音楽が聴きたくなった。彼女は、エレクトロラの蓋を払
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