一しょに店を出て行った後は、仕事も手につかないほど取乱していた自分が、自分で分っていたし……。これから先も、自分が、前川には遠慮があって、思うことの三分の一も話せないのに、妹があの調子で、渾身《こんしん》の力を振って甘えかかって行ったら……、しかも、あの奔放自在な媚態で……。などと、考えて来ると、新子はいらいらして乾いて来る自分の心を、制しきれなかった。
これはたしかに嫉妬である。しかもかなり烈しい嫉妬であると、気がつくと、その嫉妬の底に在る、前川に対する愛情に、初めて気がついたように、新子は我ながら狼狽した。これは、今の内に善後策を講じないと、どんな悲しいことになるかもしれないと考え出した。自分がどんなに叱っても制しても、どうなる妹でもないし、母にはむろん手に負えないし……新子は考え迷った末、いっそ美沢に頼んで、美和子をしっかり捕まえていてもらうのが、一番いいことだと思った。美沢だって、母をよこすくらいだから、結婚してくれる気持はあるはずだし、一度美沢に会って、美和子に対して、どんな気持を持っているのか、よく訊き質《ただ》した上で、美和子をウロウロさせないように監督してもらおうと思った。それが、昨夜の内にまとまった、新子の思案である。
四
新子は、およそ二月ぶりで、美沢に手紙を書くとなると、無理矢理に押し込んだり、駆逐したりしていた感情が、一々新しい生命を吹き込まれたように、心の隅々に甦って来て、とても平静な気持で、美沢に呼びかけ、美和子のことを書き出すことが、出来にくかった。無意味な小唄の小曲を、幾回となくくり返して、口ずさみながら、自分の感情をまぎらしてから、やっと手紙を書き始めた。
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久しいご無沙汰、おゆるし遊ばせ。
ご存じのことと思いますが、私すっかり変りましたの。ただ今、銀座のバー・スワンという酒場で傭いマダムを致しておりますの。
突然ですが、妹のことで貴君《あなた》と一度お話ししたり、お願いしたいことがございますの。それで、近日中にお目にかかりたいのですが、ご都合おしらせ下さいませ。店の方は、四時からでございますから、それまでなら結構でございます。時間と場所は、そちらでお決め下さいませ。
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書いてしまうと、気の変らぬ内に封をして、ハンドバッグの中に入れてしまった。
新子は、と
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