大阪夏之陣
菊池寛

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)丈《だけ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)小早川|隆景《たかかげ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)いきさつ[#「いきさつ」に傍点]

 [#…]:返り点
 (例)不[#レ]及[#二]言語[#一]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)しづ/\
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       夏之陣起因

 今年の四月初旬、僕は大阪に二三日いたが、最近昔の通りに出来たと云う大阪城の天守閣に上って見た。
 天守閣は、外部から見ると五層であるが、内部は七重か八重になっている。五階までエレヴェーターで行き、後は階段を昇るのであるが、自分は心臓が弱いため、高所にあると云う感じ丈《だけ》で胸苦しくなり、最高層の窓からわずかに、足下に煤烟《ばいえん》の下に横たわる大阪市を瞥見《べっけん》したに過ぎぬが、その視野の宏大なるは、さすがに太閣の築きたるに耻じないと思った。
 大阪城の天守五重説は、徳川時代の天守が五重であったから起った説で、小早川|隆景《たかか
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