に二十六時間だ。その間だけ、十分に青木を警戒することは、なんでもないことだ。今ここで、手荒い言葉をいって別れるより、ただ二十六時間だけ、彼の相手をしてやればいいのだと思った。否、あるいはその一部分の六時間か七時間か、相手をしてやればいいのだと思った。
「じゃ、ここで立ち話もできないから、ついそこのカフェ××××へでも行こう」と、雄吉は意識して穏やかにいった。が、初めてそうした世間並の挨拶をしたことが、まったく利己的な安心から出ていることを思うと、少なからず気が咎《とが》めた。
雄吉が、先に立って、カフェ××××へ入っていくと、そこにいた二、三人の給仕女は、皆クスッと笑った。今出て行ったばかりの雄吉が、五分と経たぬうちに、帰ってきたからである。しかし雄吉はそれに対して、にこりと笑い返すことはできなかった。彼の心は大いなる脅威から逃れていたとはいえ、まだ青木という不思議な人格の前において、ある種々の不安と軽い恐怖とを、感ぜずにはおられなかった。
二
過去において、青木は雄吉にとって畏友であり、親友であり、同時に雄吉の身を滅ぼそうとする悪友であった。
雄吉は、初めて青木を知っ
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