。雄吉はその男女の組合せが変なので、最初から好奇心を持っていた。すると、そこへ医員らしい男が現れた。その医員はその四十男と、かねてからの知合いであったと見え、その男に「どうしたのです。どこか悪いのですか」と、きいた。すると、その男はまるきり事務の話をするように、ちょっと連れの女を振り返りながら、「いやこれが娼妓《しょうぎ》になりますので、健康診断を願いたいのです」と、いった。それはその男にとっては、幾度もいいなれた言葉かも知れなかった。が、娼妓になるための健康診断を受けることを、多くの患者や医員や看護婦たちの前で披露されたその女――おそらく処女らしい――その女の顔はどんな暴慢な心を持った人間でも、二度と正視することに堪えないほどのものであった。
女は心持ち顔を赤らめた。その二つの目は、血走って爛々と燃えていた。それは、人の心の奥まで、突き通さねば止まない目付であった。雄吉は、その目付を今でも忘れていない。それは恥じ、怒り、悲しんでいる人間の心が、ことごとく二つの瞳から、はみ出しているような目付であった。もう、それは三、四年も前のことであった。が、今でも意識して瞳を閉じると、その女の顔
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