真田幸村
菊池寛

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)字《あざな》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)舎弟|典厩《てんきゅう》
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[#7字下げ]真田対徳川[#「真田対徳川」は中見出し]

 真田幸村の名前は、色々説あり、兄の信幸は「我弟実名は武田信玄の舎弟|典厩《てんきゅう》と同じ名にて字《あざな》も同じ」と云っているから信繁《のぶしげ》と云ったことは、確《たしか》である。
『真田家古老物語』の著者桃井友直は「按ずるに初は、信繁と称し、中頃幸重、後に信賀《のぶよし》と称せられしものなり」と云っている。
 大阪陣前後には、幸村と云ったのだと思うが、『常山紀談』の著者などは、信仍《のぶより》と書いている。これで見ると、徳川時代には信仍で通ったのかも知れない。しかし、とにかく幸村と云う名前が、徳川時代の大衆文学者に採用されたため、この名前が圧倒的に有名になったのだろう。
 むかし、姓名判断などは、なかったのであるが、幸村ほど智才|秀《すぐ》れしものは時に際し事に触れて、いろいろ名前を替えたのだろう。
 真田は、信濃の名族|海野《うんの》小太
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