の如き美貌を持つた若き夫人の立姿であつた。而も、この肖像画の成功はその顔に巧みに現はされた自覚した近代的女性に特有な、理智的な、精神的な、表情の輝きであると云はれてゐた。その絵を親しく見た人は、画面の右の端に、K. K. と署名《サイン》されてゐるのに気が付いただらう。それは、妹の保護のもとに、芸術の道に精進してゐた唐沢光一が、妹の横死を悼む涙の裡に完成した力作で、彼女に対する彼が、唯一の手向であつたのであらう。
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瑠璃子を失つた美奈子の運命が、此先|何《ど》うなつて行くか、それは未来のことであるから、此の小説の作者にも分らない。が、われ/\は彼女を安心して、直也の手に委せて置いてもいゝだらうと思ふ。
底本:「菊池寛全集 第五巻」高松市菊池寛記念館刊行、文藝春秋発売
1994(平成6)年3月15日発行
底本の親本:「菊池寛全集 第六巻」中央公論社
1937(昭和12)年9月21日刊行
初出:「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」
1920(大正9)年6月9日〜12月22日
初収単行本:「真珠夫人(前編・後編)」新潮社
1920(大正9)年
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