を窺《うかが》つた。西洋人の少年少女が二人連れ立つて、自分の部屋へ、帰つて行くらしいのを除いた外には人影はなかつた。
彼女は、廊下を左へ取つた。その廊下を突き当つて左へ降りると、ホテルの玄関を通らないで、広場へ出ることを知つてゐた。
彼女は、廊下を馳け過ぎた。階段を、一気に馳け降りた。そして、階段の突き当りにある、扉《ドア》を押し開いて、夜の戸外へ、走り出ようとした。
が、その扉《ドア》を押し開いた刹那であつた。
「おや!」戸外に、叫ぶ声がした。戸外からも、扉《ドア》を開けようとした人が、思はず内部から開いたので、駭《おどろ》いて発した声だつた。美奈子は、直ぐ、さう叫んだ人と、顔を面して立たなければならなかつた。それは、正《まさ》しく母だつた。母の後に、寄り添ふやうに立つてゐるのは、もとより彼の青年だつた。
「美奈さんぢやないの!」
母は、可なり駭いてゐた。狼狽してゐたと云つてもよかつた。美奈子は、全身の血が、凍つてしまつたやうに、ぢつと身体を縮ませながら、立つてゐた。
「何うしたの? こんなに遅く?」
青年との会話には、あんな冷静を保つてゐた母が、別人ではないかと思ふほど、
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