つしやるのぢやありますまいね。」
青年が、さう訊き詰めても母は、黙つてゐた。青年は、愈々焦つた。
「本心ならば、証拠を見せて下さい。貴女のお言葉|丈《だ》けは、もう幾度聴いたか分らない。貴女は、それと同じやうな言葉を、僕に幾度繰返したか分らない。僕は言葉|丈《だけ》ではなく、証拠を見せて貰ひたいのです。本心ならば、本心らしい証拠を見せていたゞきたいのです。」
青年が、焦《あせ》つても激しても、動かない母だつた。
「証拠なんて! 妾《わたくし》の言葉を信じて下さらなければ、それまでよ。お女郎ぢやあるまいし、まさか、起請《きしやう》を書くわけにも行かないぢやないの。」
母の貴婦人《レディ》らしからぬ言葉遣ひが、美奈子の心を傷ましめた。
「証拠と云つて、品物を下さいと云ふのぢやありません。僕が、先日云つたことに、ハツキリと返事をしていたゞきたいのです。たゞ『待つてゐろ』ばかりぢや僕はもう堪らないのです。」
「先日云つたことつて、何?」
母は、相手を益々じらすやうに、しかもなまめ[#「なまめ」に傍点]かしい口調で云つた。
「あれを、お忘れになつたのですか、貴女《あなた》は?」
青年は
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