じた。さうした陶酔の醒め際に、彼の烈しい情火が、ムラ/\と彼の身体全体を、嵐のやうに包むのだつた。
瑠璃子は、勝平のさうした悩みなどを、少しも気が付かないやうに、雲雀《ひばり》のやうに快活だつた。彼女は、勝平との感情の経緯を、もうスツカリ忘れてしまつたやうに、ほんたうの娘にでも、なりきつたやうに、勝平に甘えるやうに纏はつてゐた。
「おい瑠璃さん。もう、お父様ごつこも大抵にしてよさうぢやないか、貴女《あなた》も、少しは私が判つただらう。はゝゝゝゝ。約束の半年を一月とか二月とかに、縮めて貰へないものかねえ!」
勝平は、その夜、自動車での帰途、冗談のやうに、妻の柔かい肩を軽く叩きながら、囁いた。
「まあ! 貴君《あなた》も、性急《せつかち》ですのねえ。妾《わたくし》達には約婚時代といふものが、なかつたのですもの。もつと、かうして楽しみたいと思ひますもの。何かが来ると云ふことの方が、何かが来たと云ふことよりも、どんなに楽しいか。それに妾《わたくし》本当はもつと処女でゐたいのよ。ねえ、いいでせう。妾《わたくし》のわが儘を、許して下さつてもいゝでせう!」
さう云ふ言葉と容子とには、溢れるやう
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