う。彼女は、ふり搾るやうな声を立てた。
「お父様! お願ひでございます。何《ど》うぞ、内済にして下さいませ! 妾《わたくし》が、短銃《ピストル》で打たれましたなどは、外聞が悪うございますわ。どうぞ! どうぞ!」
 彼女は、哀願するやうに、力一杯の声を出した。
 荘田は、娘からの思ひがけない抗議に、狼狽《うろた》へながら、尚も頑然として云つた。
「お前さんの知つたことぢやない。お前さんは、そんなことは、一切考へないで、気を落着けてゐるのだ。いゝか。いゝか。」
「いゝえ! いゝえ! 妾《わたくし》を打つたために、あの方が牢へ行かれるやうなことが、ございましたら、妾《わたくし》は生きては、をりません。お父様! どうぞ、どうぞ、内済にして下さいませ。」
 美奈子は、息を切らしながら、とぎれ/\に云つた。傲岸不屈な荘田も、遉《さすが》に黙つてしまつた。
 直也の二つの眼には、あつい湯のやうな涙が、湧くやうに溢れてゐた。初めて、顔を見たばかりの少女の、厚い情《なさけ》に対する感激の涙だつた。


 心の武装

        一

 記憶のよい人々は、或は覚えてゐるかも知れない。大正六年の九月の末
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