ではありませんか。貴君こそ、自分の不明を恥ぢて、私の前でいつかの暴言を謝しなさい! 唐沢のお嬢さんは、もう此の通り、ちやんと前非を悔いてゐる。御覧なさい! 此の手紙を!」
 さう云ひながら、荘田は得々として、瑠璃子の手紙を直也に突き付けたとき、彼の心は火のやうな憤《いきどほり》と、恋人を奪はれた墨のやうな恨《うらみ》とで、狂つてしまつた。

        七

「御覧なさい! 私は、自分の息子の嫁に、するために、お嬢さまを所望したのだが、お嬢さまの方から、却つて私の妻になりたいと望んでをられる。有力な男性的な実業家の妻として、社会的にも活動して見たい! かう書いてある。あはゝゝ[#「あはゝゝ」は底本では「はあゝゝ」]。何《ど》うです! お嬢様にも、ちやんと私の価値が判つたと見える。金の力が、どんなに偉大なものかが判つたと見える! あはゝゝ。」
 荘田は、得々とその大きな鼻を、うごめかしながら、言葉を切つた。
 直也は、湧き立つばかりの憤怒と、嵐のやうな嫉妬に、自分を忘れてしまつた。彼は瑠璃子の手紙を見たときに、荘田と媒介人たる自分の父とに、面と向つて、その不正と不倫とを罵り、少しでも
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