の筋肉が、ピク/\と痙攣する丈で、言葉は少しも、出て来なかつた。
「何《ど》う云ふ御用です。承らうぢやありませんか。何う云ふ御用です。」
荘田はのしかゝるやうに畳かけて訊いた。直也は、心の裡に沸騰する怒りを、何う現してよいか、分らないやうに、暫らくは両手を顫はせながら、荘田の顔を睨んで立つてゐたが、突如として口を切つた。
「貴君《あなた》は、良心を持つてゐますか。」
「良心を!」と、荘田は直ぐ受けたが、問が余りに唐突であつたため暫らくは語《ことば》に窮した。
「さうです。良心です。普通の人間には、そんなことを訊く必要はない。が、人間以下の人間には、訊く必要があるのです。貴君は良心を持つてゐますか。」
直也は、卓を叩かんばかりに、烈しく迫つた。
「あはゝゝゝゝ。良心! うむ、そんな物はよく貧乏人が持ち合はしてゐるものだ。そして、それを金持に売り付けたがる。はゝゝゝ、私も度々買はされた覚えがある。が、私自身には生憎良心の持ち合せがない、はゝゝゝ。いつかも、貴君に云つた通り、金さへあれば、良心なんかなくても、結構世の中が渡つて行けますよ。良心は、羅針盤のやうなものだ。ちつぽけな帆前や、た
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