が――突然現れて来ることは、いかにも愧しいキマリの悪い事に違ひなかつた。彼は、顔には現はさなかつたが、心の裡では、可なり狼狽した。荘田が、早く気を利かして、小切手帳をしまつて呉れればいゝ、呉れるものは、早く呉れて、早く蔵つて呉れゝばいゝと、虫のいゝことを、考へてゐたけれど、荘田は妙に興奮してしまつて、小切手帳のことなどは、念頭にもないやうだつた。マザ/\と見えてゐる一万円也と云ふ金額が、杉野や木下等の罪悪を、歴々と語つてゐるやうに、子爵には心苦しかつた。
「一体、私の倅は何だつて、貴方をお尋ねするのです。前から御存じなのですか。何の用事があるでせう。」杉野子爵は、堪らなくなつて訊いた。
「いや、今に直ぐ判ります。やつぱり、今度の私の結婚に就てです。が、媒介の手数料《コンミッション》を貰ひに来るのでないことは、確《たしか》ですよ、はゝゝゝゝ。」
 と、荘田は腹を抱へるやうに哄笑した。その哄笑が終らない中に、彼の背後《うしろ》の扉《ドア》が、静かに開かれて、その男性的な顔を、蒼白に緊張させてゐる、杉野直也が姿を現した。

        六

 直也の姿を見ると、荘田の哄笑が、ピタリと中断
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