通《とほり》だらう。君は、高潔な人格の唐沢さんは、決してそんな事はしないとか何とか云つて、反対したぢやないか。何うだ! 人間は、金に窮すればどんなことでもするだらう。金に依つて、保護されてゐない人格などは、要するに当にならないのだ。清廉潔白など云ふことも、本当に経済上の保証があつて出来ることだよ。貧乏人の清廉潔白なんか、当になるものか。はゝゝゝゝゝ。」
此の世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることの無いやうに、勝平は得意だつた。
「だが、私は気になります。私は唐沢さんが自殺しやしないかと思つてゐるのです。何うもやりさうですよ。屹度《きつと》やりますよ。」木下は、心からさう信じてゐるやうに、眉をひそめながら云つた。
「うむ! 自殺かね。」遉《さすが》に荘田も、一寸誘はれて眉をひそめたが、直ぐ傲岸な笑ひで打ち消した。
「はゝゝゝ、大丈夫だよ。人間はさう易々とは、死なないよ。いや待つてゐたまへ。今に、泣きを入れに来るよ。なに、先方が泣きを入れさへすれば、さうは苛《いじ》めないよ。もと/\、一寸した意地からやつてゐることだからね。」
「それでも、もしお嬢さんをよこすと云つたら御結婚になりますか
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