ば、彼女を思ひ知らせるには、さうだ! 彼女を思ひ知らせるには。
さう考へたとき、彼の全身の血は、海嘯《つなみ》のやうに、彼の狂ひかけた頭へ逆上して来た。
破裂点
一
強羅公園で、お互の心からなる浄い愛に、溶け合つた美奈子と瑠璃子とが、其処に一時間以上も費して、宮の下へ帰つて来たのは、夜の十時を廻つた頃だつた。
二人とも、心の裡では、青年のことが気になつてゐたけれども、それを口に出すことを避け合つた。
が、部屋へ入つたとき、瑠璃子は遉《さすが》に青年の寝室の扉《ドア》に立ち寄つて、そつと容子を窺つた。
「もう、青木さんは寝たのかしら。」
さう云つて、彼女は扉《ドア》に手をかけて見た。それは平素《いつも》[#ルビの「いつも」は底本では「いつち」]になく内部から、鍵が、かけられたと見え、ビクリとも動かなかつた。
「あゝ。もう、寝ていらつしやる!」
瑠璃子は、やつと安堵したやうに云つた。
美奈子と瑠璃子とが、同じ寝室に入つて、寝台《ベッド》の中に横はつたのは、もう十一時を廻つた頃だつた。
電燈を消してからも、美奈子は母と暫らくの間、言葉を交へた。その裡に、十二時が鳴つた。彼女は、駭《おどろ》いて眠《ねむり》に入らうとした。が、その夜の烈しい経験は、――彼女が生れて以来初めて出会つたやうな複雑な、烈しい出来事は、彼女の神経を、極度に掻き擾《みだ》してゐた。彼女が、いくら眠らうとあせつても、意識は冴え返つて、先刻の恐ろしい情景が、頭の中で幾度も幾度も、繰り返された。青年の凄いほど、緊張した顔が、彼女の頭の中を、巴《ともゑ》のやうに馳け廻つた。
眠らう眠らうとあせればあせるほど、神経が益々いらだつて来た。記憶が、異常に興奮して、自分の生ひ立ちや、母の死や父の死や、兄の事などが、頭の中に次ぎ/\に思ひ浮んで来た。
その裡に一時が鳴つた。
瑠璃子も、寝台《ベッド》の中で、暫らくの間は、眠り悩んでゐたやうだつたが、その裡に、おだやかな鼾《いびき》の声が聞え初めた。
母が、眠《ねむり》に就いたのを知ると、美奈子は益々あせつてゐた。口の中で、数を算へて見たり、深呼吸をして気持を落ち着けようと試みたりした。が、それもこれも無駄だつた。先刻聴いたばかりの青年の怨みの声が、落ち着かうとする美奈子の心の裡に、幾度も/\甦つて来た。
その裡に、二時
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