セスもいないのだろう。あのプリンセスも!」
ベッキイはしゃくり上げて来る欷歔《すすりなき》を、ごくりとのみこみながら戸を押しあけました。と、思わず彼女は声を立てました。
ラムプは室内に照りはえ、火は燃えさかり、夕餉の支度もちゃんと出来ています。そしてラム・ダスが笑いながら、彼女の方を見て立っているのです。
「お嬢様がお気づきになりましてね。ご主人様に、すっかりあなたのことをお話しになりましたのですよ。お嬢様は、御自分の幸運《しあわせ》を、あなたにお知らせしたがっていらっしゃるのですよ。このお盆の上のお手紙を御覧下さい。お嬢様がお書きになったのです。お嬢様は、あなたが悲しくお休みにならないようにとお思いになったのでしょう。御主人は、明日あなたにも来ていただきたいと仰しゃっておいででした。明日から、あなたはお嬢様のお附きになるはずです。今夜は、これからここにあるものを、また屋根越しに持って帰らなければなりません。」
輝かしい顔で、こういい終りますと、ラム・ダスは額手礼《サラアム》をして、身軽に、音も立てずに、天窓から抜け出して行きました。ベッキイはそれを見ると、「あの人はあんなにして
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