すっかりさめてしまいました。炉の中の紙屑は消えて黒い燃殻《もえがら》になり、テエブルの上に飾ったものは、鞄の中にあった時のように古ぼけて、床に散らばっていました。セエラはエミリイが壁に寄りかかっているのを見付けると、震える手で抱き上げました。
「もう御馳走どころじゃアないのよ。宮様《プリンセス》もなにもいやしないのよ。バスティユの囚人がここにいるばかりだわ。」
 セエラはべたりと坐って、両手で顔を被おうとしました。その間にさっきの黒い顔が、また天窓の上に現れました。が、セエラはそれには気がつきませんでした。セエラはやがて立ち上って寝床の方に行きました。もう何のつもり[#「つもり」に傍点]になる張合《はりあい》もありませんでした。
「あの炉に火が入っているといいな。火の前には、気持のいい椅子テエブルがあって、暖かな晩御飯が乗っているといいな。それから、あの――」と薄っぺらな夜具をかけながら、「これが、柔かな寝台で、羊毛の毛布や、ふうわりした枕がついているのだったら、そして、それから――」
 セエラは思っているうち疲れはてて、いつかぐっすり眠ってしまいました。
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