のパンが、魔法のパンで、一口食べると、お午飯《ひる》を食べたぐらいお腹がふくれるといいな。そうすると、これだけ皆食べたら、食べ過ぎてお腹がはちきれそうになるはずだわ。」
日はもう暮れかけていましたが、大屋敷の窓にはまだ鎧戸《よろいど》が下してありませんでしたので、内部《なか》の様子をちらと覗くことが出来ました。いつもは、父親が椅子に坐って、子供達に取りまかれているのでしたが、今日は旅にでも出るらしく、母親や子供達とお別れの接吻をしていました。
玄関の戸が開いたので、セエラはいつかお金をもらった時の事を思い出し、見つからぬ先に逃げ去ろうとしました。が、こんな話は聞き洩しませんでした。
「モスコウは、雪で包まれてるでしょうね。どこも、かしこも、氷ばかりなのでしょうね?」というのはジャネットの声でした。
「お父様、露西亜馬車《ドロスキイ》にお乗りになる?」もう一人の娘はいいました。「皇帝《ツアル》にもお会いになる?」
「そんなことは手紙で知らせるよ。農民《ムジイク》やなんかの絵端書《えはがき》も送ってやろう。さ、もう家《うち》にお入り。いやにじめじめしているね。お父さんは、モスコウなんか
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