うだったのよ。けれど、あなたのお父様はあの方の御病気がまだ悪いさなかに、亡くなっておしまいになったのですよ。」
「そうして、あの方は、どこに私がいるかは御存じなかったのね。私はこんな近くにいたのに。」
 セエラの頭にはなぜか、こんな近くにいたのにということが、こびりついていました。
「あの方は、あなたがパリイの学校にいらっしゃるとばかり思っていらしったのですよ。」カアマイクル夫人は、いって聞かせました。「それに、いつもいつも間違った手掛りに迷わされていらしったんですの。でも、あの方は到る所、あなたを探し廻ってらしったんですよ。あなたが、いたましい様子で通りかかるのを見ていながらも、それが気の毒な友人のお子だとはお気づきにならなかったのね。でも、あの方は、あなたもやはり小さい女の子だもので、気の毒でたまらなくって、どうかしてあなたを幸福《しあわせ》にしてあげようとお思いになったのね。で、あの方はラム・ダスにいいつけて、あなたのお部屋の天窓から、いろいろのものを持ちこんだわけなのですよ。」
 セエラは、うれしさのあまり飛び立つばかりでした。彼女の顔色はみるみる変って来ました。
「じゃア、あれは皆ラム・ダスさんが持って来て下すったんですの? あの方がラム・ダスさんにおいいつけになったんですって? 私の夢を現《うつつ》にして下すったのは、それじゃア、あの方だったのだわね。」
「そうですとも。あの方は、親切ないい方なのですよ。あの方は、行方のしれないセエラ・クルウのことを想えばこそ、あなたのこともお気の毒になったのですよ。」
 書斎の扉が開いて、カアマイクル氏が姿を見せ、セエラに来いというような様子をしました。
「カリスフォドさんは、すっかり気持がよくおなりです。だから、あなたに来ていただきたいと仰しゃってです。」
 セエラは、カアマイクル氏の言葉が終るのを待たず、書斎に入って行きました。入って行った時のセエラの顔は、さっきとはまるで変っていました。
 セエラは、紳士の椅子の傍《かたわら》に立ち、両手を腕に組み合せて、うれしそうにいいました。
「あなたがあの、美しいものをたくさん下すったのですってね。」
「そうだよ、可愛い嬢や、私が送ってあげたのだよ。」
 紳士は永い間の病気や心配のため、心も体も弱りはてていました。が、彼は、セエラを抱きしめてもやりたいというようなやさしい眼
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