冊には一銭位しかかゝらないことになるのだ。百万も予約者があれば、一冊五厘もかゝらないわけだ。
しかし、予約者が五十万に達しないときは恐らく何十万円と云ふ損失だらう。しかし文藝春秋社は噂ほど金はないが、噂の十分の一もないが、興文社は東京の書肆中その財力の充実してゐる点で、一二を争ふ大書肆であるから、予約八十巻を立派に完成するだらうと思ふ。僕も編輯には勿論、発行にも全責任を負ふつもりである。
また、この雑誌の出るまでには、新聞に広告するつもりだが、僕がこの編輯から得る報酬の一部を割いて、小学校卒業生で学資のない人達の奨学金にしたいと思つてゐる。
今度の仕事は、自分も仕事そのものゝ壮快さと重大さとのために、働いてゐるので、若しある程度以上の予約者がなく、仕事が失敗に了るやうであつたら、一銭の報酬もとらないつもりである。しかし、各方面の同情を得て、収支が償ふだけの予約者があつたならば、凡てを放擲してその編輯に当り、完全無欠なる小学生全集をつくり上げたいと思つてゐる。
「文藝春秋」の愛読者諸君も此の仕事は仕事としては、僕が一世一代の仕事であり、文藝春秋社の浮沈の分るゝころでもあるから、ぜひ
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