将棋
菊池寛
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)而《しか》も
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)結局|盤数《ばんかず》を
/\:二倍の踊り字(「く」を縱に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\
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将棋はとにかく愉快である。盤面の上で、この人生とは違つた別な生活と事業がやれるからである。一手一手が新しい創造である。冒険をやつて見ようか、堅実にやつて見ようかと、いろ/\自分の思ひ通りやつて見られる。而《しか》も、その結果が直ちに盤面に現はれる。その上、遊戯とは思はれぬ位、ムキになれる。昔、インドに好戦の国があつて、戦争ばかりしたがるので、侍臣が困つて、王の気持を転換させるために発明したのが、将棋だと云ふが、そんなウソの話が起る位、将棋は面白い。金の無い人が、その余生の道楽として、充分楽しめるほど面白いものだと思ふ。
将棋の上達方法は、誰人《だれ》も聴きたいところであらうと思ふが、結局|盤数《ばんかず》を指すのが一番だと思ふ。殊《こと》に、自分より二枚位強い人に、二枚から指し、飛香《ひきやう》、飛、角、香と上つて行くのが、
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