も、もうあなになってしもうた。ああおっ母、甚吉、甚三、甚作、どなな気持じゃ、あはははは(甚兵衛哄笑しつづける)……今度はわしの番じゃ。早う磔にして下されや。
村人たち (急に動揺す)甚兵衛どん。ありがとう、拝みますぞ。御恩は忘れませんぞ……。南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!
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(刑吏たちは磔柱を起し、それに甚兵衛をくくりつけようとする)
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
甚兵衛 何が南無阿弥陀仏じゃ。皆喜んで、下っしゃれ。わしゃ、こなな気持のしたことはないのや。あははは。
[#ここで字下げ終わり]
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(群衆たちの賛嘆、悲嘆のうちに、甚兵衛の笑い、いよいよ高くなっていく)
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ]――幕――
底本:「菊池寛 短編と戯曲」文芸春秋
1988(昭和63)年3月25日第1刷発行
入力:真先芳秋
校正:大野 晋
2000年8月28日公開
2004年2月12日修正
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