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(竹の皮に包んだ握り飯を見せる)
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名主 おお、それゃええ思い付きじゃ、甚兵衛どんも飢饉で、ろくなもの食べとらんけに、欣ぶに違いないわ。
村人六 わしゃ、そう思ったけにのう、大事な大事な来年の籾種《もみだね》の中から、三合ばかり飯にたいたのじや。
茂兵衛 おお、それあええことしてくれた。この茂兵衛が礼をいいますぞ。
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(この時、かなたより群衆のざわめきがきこえる)
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村人一、二 ああ来た! 来た!甚兵衛どんが来た。
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(群衆、口々に甚兵衛の名を呼びながら、その方へ波を打って動く。やがて、裸馬に乗せられた甚兵衛母子が着く。馬から降りる。群衆の間を過ぎる)
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茂兵衛 甚兵衛どん。わしたちは、みんな来ておるぞ。
名主一 わしたちは、みんな陰ながら、拝んどるぞ。
村年寄二 心強う思
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