二百十二カ村になったぞ。夜更けにお城下へ押し寄せて、御家老たちの家を叩き壊すいうとるぞ。はよう、用意せい。ええか。わかったか。
甚吉 わかった。わかった。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから4字下げ]
(藤作、駆け去る)
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
おきん (狼狽しながら)どうしよう。どうしよう。
甚吉 仕方がねえ。わし行くぞ。
おきん 阿呆いうな。後嗣《あとつぎ》のお前に万一のことがあったらどうするんじゃ。われは行くんじゃねえ。
甚三 兄貴は、家にいるがええ。わしが行くだ。わしが。
おきん われも行くでねえ。加担して、後で打首にでもなったら、どうするだ。
甚三 そなな心配がいるもんけ。何万という人数じゃもの。ただついて行っただけで打首になんか、なって堪るけい。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから4字下げ]
(急に炬火の火が近づいてくる。一揆らが近づいてきた物音がきこえる。寺の鐘、段々と鳴りつづける)
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
おきん こちらへ来るだ。こちらへ来るだ。われら、みんな隠れとれ
前へ
次へ
全52ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング