盗たちを客間へ引き入れたのはドバルです。そして伯爵が目を覚ましたので、ドバルは短剣を持って伯爵に飛びつきました。伯爵はついにその短剣を奪いとってドバルを刺したのです。それと同時に、も一人の曲者に眉間を殴られて気を失ったのです。」
ルパン?生?死?
判事とガニマールはまた顔を見合《みあわ》せた。
「伯爵、この話は真実でございましょうか?……」
判事は尋ねた。伯爵は答えなかった。
「黙っていらしってはかえっていけません。どうぞお話し下さい。」
「今のお話しはみんな本当です。」伯爵ははっきりといった。判事は飛び上って驚いた。
伯爵は、二十年も自分の家に働いたドバルを賊の仲間だと知らせたくなかった。それにもうドバルは殺されているのでそれで十分だと思った。ドバルは二年前からある婦人と知り合いになり、その人にお金を送るために盗賊をするように[#「するように」は底本では「すやるうに」]なったということなどを伯爵は語った。
伯爵が室を出ていったあとで判事は今度は犯人の隠れている宿屋のことのついて尋ねた。ボートルレの答えはまた違っていた。ボートルレの答えによると、犯人
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