に僕の調べたところによると、あの名画を写させてくれといった画家は、ドバルの知り人《びと》だったということです。それでいよいよ僕はドバルが怪しいと思いました。」
「するとどういうことになりますか?」
「つまり画家とドバルとは仲間でした。それにはたしかな証拠があります。ドバルが手紙を書いた吸取紙の端《はじ》に『A《ア》・L《エル》・N《エヌ》』[#「』」は底本では欠落]という字があったのを見つけました。電報の名前と同じです。ドバルは名画を盗みとった強盗犯人と手紙のやり取りをしていたのです。」
「なるほど、そして……」判事はもう反対しなかった。
「ですから、逃げた犯人が、仲間であるドバルを殺すはずはありません。」
「そうかしら?」
「判事さん思い出して下さい。気を失っていた伯爵が一番初めに叫んだ言葉は『ドバルは生きているか?』ということでした。その後伯爵は『眉間を曲者に殴られて気を失ってしまった。』といわれました。どうして気を失った伯爵が、正気づくと同時にドバルが短剣で刺されたことを知っていたのでしょう。」
そしてすぐまたボートルレはつづけた[#「つづけた」は底本では「けつづた」]。
「強
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