っと十日で考えてみせよう。
しかし十日もすぎ、十一日十二日もすぎてしまった。が十三日目に、少年の頭にさっとある考えが浮んだ。きっとこれはルパンも考えついたことに違いない。それはエイギュイユ・クリューズの秘密が、仏蘭西《フランス》国家に代々伝わった秘密である以上、何かこの秘密をめぐって、一筋の繋がった事件が歴史に表われてはいないだろうか。
少年は一生懸命歴史を調べ始めた。しかし歴史は種々《いろいろ》で、なかなかそれを調べて一筋の繋がりを探し出すことは難しい仕事であった。しかしボートルレが熱心に調べたところ、種々《いろいろ》の事件の中に一つの繋がりがあることを見出した。
それはすべての事件が、ルーアン、ドイエップ、ルアーブル……この三つの都会に何かの繋がりがあることである。
大昔、エイギュイユの秘密を知っていた人々はみんなこの三つの都のうちの、どれかの王であったり、またはそこで殺されたり、そこで戦争をしたりしているのである。そしてルイ十四世の時、あの本を火の中から盗み出して秘密を知り、宝物《ほうもつ》を盗み出していた大尉が、ポケットに立派なダイヤモンドを入れたまま、道の真中に死体となって現われたその場所もまた、ルーアンから、ドイエップから、ルアーブルから、この三つの都会からパリへ行く道なのである。
ルーアン……ドイエップ……ルアーブル……は三角形をなしている。すべてはそこにある。
一つは海、一つはセーヌ河、一つはルーアンからドイエップへ通じている一つの大きな谷。
その時また、少年の頭に一つの光が流れた。それはこの三角形の場所こそ、巨人ルパンがいつも活動する場所だということである。この十年ばかりの間、世間の人たちを驚かせながら活動した場所はいつもここであった。
しかも今度の事件は?、ジェーブル伯爵のあの僧院のある場所は、やはりルアーブルからドイエップへ通う道にある。きっとルパンは十年ばかり前にエイギュイユの秘密を探り出して、その宝物《ほうもつ》の隠してある場所を知ったに違いない。ルパンの力はそれだからこそ大きかったのに違いなかった。
少年は意気揚々とパリを出発した。少年は三角形の中のすべてを片っぱしから調べ始めた。
少年はある朝村の小さな飯屋で、馬方のような男がじろじろと自分を見ているのに気がついた。ボートルレは変な奴だと思ってその飯屋を出ようとすると
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