我が馬券哲学
菊池寛

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)載《の》せる

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)尚|禅機《ぜんき》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
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 次ぎに載《の》せるのは、自分の馬券哲学である。数年前に書いたものだが、あまり読まれていないと思うので再録することにした。

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
一、馬券は尚|禅機《ぜんき》の如し、容易に悟りがたし、ただ大損をせざるを以て、念とすべし。

一、なるべく大なる配当を獲《え》んとする穴買主義と、配当はともかく勝馬を当んとする本命主義と。

一、堅き本命を取り、不確かなる本命を避け、たしかなる穴を取る、これ名人の域なれども、容易に達しがたし。

一、穴場に三、四枚も札がかかると、もう買うのが嫌になる穴買主義者あり、これも亦馬券買いの邪道。

一、穴場の入口の開くや否や、傍目《わきめ》もふらず本命へ殺到する群集あり、本命主義の邪道である。他の馬が売れないのに配当金いずれにありやと訊い
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