も実力比敵し、いずれが勝つか分らず、かかる場合は却って第三人気の大穴を狙うにしかず。
一、大穴は、おあつらえ通りには、開かないものである。天の一方に、突如として開き、ファンをあっけに取らせるものである。何々が、穴になるだろうと、多くのファンが考えている間は、絶対にならないようなものである。それは、もう穴人気と云って、人気の一種である。
一、剣を取りて立ちしが如く、常に頭を自由に保ち固定観念に囚わるること勿《なか》れ、偏愛の馬を作ること勿れ。レコードに囚わるること勿れ、融通無碍しかも確固たる信念を失うこと勿れ。馬券の奥堂に参ずるは、なお剣、棋の秘奥《ひおう》を修めんとするが如く至難である。
一、一日に、一鞍か二鞍堅い所を取り、他は悉《ことごと》く休む人あり、小乗なれども亦一つの悟道たるを失わず。大損をせざる唯一の方法である。
一、損を怖れ、本命々々と買う人あり、しかし損がそれ程恐しいなら、馬券などやらざるに如かず。
一、一日に四、五十円の損になりても、よき鑑定をなし、百四、五十円の中穴を一つ当てたる快味あれば、償うべし。
一、百二、三十円の穴にても、手柄の上では二百円に当るも
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