た。
久米に対する判断も、性格技能を語る点では実によく適中した。たゞそのときは、二十七歳前の久米を、三十七歳前だと、見誤ったためすっかり我々の信用を害い、我々はその他の判断まで、馬鹿にしてしまったが、私に対する判断は実に悉く適中した。つい先頃も、久米に逢ったとき彼は『あのとき君の手相はよく当った』と、三嘆したほどである。
私は、此頃になって、手相があんなにまで当るものなら、少し学びたいとも思っている。茫漠たる人生の行路を思うとき、自分自身の運命について、おぼろげながらも知りたいと云う気がしている。先日も、岡栄一郎が座興に手相を見るのを見て、いよいよ手相を学びたいと思った。岡は、手相について多くを知らないが、その少しを学生時代の友人から学んだと云っている。その友人は、手相を専門に研究していたが、ある日自分の掌に肉親に不幸があるという兇相が現われたのである。駭いて帰郷の支度をしているとき、彼自身が喀血して死んだと云うのである。掌中の兇相は自分自身の身上であったことに気がつかなかったのである。その友人の死床に侍したと云う、岡の口からきけば、可なり凄壮な話である。私は、岡から、その話を聞い
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