の畔の田舎町アンデルスに生れた少年。パトラッシュは、フランダース産の大きな犬なのです。このふたりは、年数《としかず》から言ったら、いわゆるおなじ年ですが、一方はまだあどけない子供ですのに、一方はすでに老犬の部類に入っています。ふたりが友達になったそもそものはじまりは、お互いに同情し合ったのがもとで、日を経《ふ》るにしたがって、その気持はますます深まり、今ではもう切っても切れない親しさにむすびついてしまいました。
村はずれの小さな小舎《こや》、それがふたりの家でした。
この村というのは、ベルギーの首府アントワープから一里半ばかり離れたフランダースの一村落で、まわりには麦畑や牧場が広々とつらなっていて、その平野を貫ぬく大きな運河の岸には、ポプラや赤揚樹《はんのき》の長い並木が、そよそよ吹く微風《そよかぜ》にさえ枝をゆすぶっていました。村には家屋敷がおよそ二十ばかり、その鎧戸は、みんな明るい緑色か、青空そのままの色に塗られ、屋根は、多くは紅《あか》い薔薇《バラ》色、または黒と白のまだらに塗られていました。壁は雪のように真白で、太陽[#「太陽」は底本では「大陽」]に輝いている時は目がいたく
前へ
次へ
全71ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング