て、ひなのロックを引き出して、りょうりをしはじめました。私は、そんなことをすると、きっとあとでこわい目にあうにちがいないから、およしなさい、およしなさい、と言ってとめました。しかし商人たちは、かまわずどんどん、いろんなごちそうに作っていました。
 すると、それからすぐでした。急に空がまっ暗になって、あのロックの大きな黒いつばさが、私どもの頭の上へおおいかぶさってきました。
 私たちは命からがら船へ帰りました。船長は、さっそく船を出しました。親鳥が大へんおこっているということが、わかりましたから。
 おそろしい大きな鳥は、すぐに海の上へ追っかけて来ました。空は見る見るまっ暗になってしまいました。見上げると、大きなつばさがぴゅーんぴゅーんと風をきっています。とがった爪の間には、大きな石を、いくつもいくつも持っていました。それは石というよりも、岩と言いたいくらい大きなものです。
 船のま上へ来た時、持っていた石を一つ落しました。石はびゅーっとうなりを立てて落ちて来ました。さいわい、それは船にはあたりませんでした。すぐ近くの海がまっ二つにさけて、船のまわりには、海の底《そこ》の砂のまじった波が、まるでかべのように立ち上りました。
 やれうれしやと思って、上を見上げると、まあどうしましょう、もう一羽、ロックがやって来ているのです。そして、しっかりとねらいを定めて、今にも石を落そうとしているのです。
 ああ、とうとう船はだめでした。みじんにくだかれてしまいました。つぶされて死ななかったものは、海の中へほうり出されて、波のまにまに沈んでゆきました。
 しかし、運のいいことには、私は、浮いていた板にとりつくことができました。そして、足をぶらぶらさせているうち、ある島へつきました。
 ほんとうに全く、この島にこそは、私はおどろいてしまいました。きっと、世界で一ばん美しい島だろうと思います。
 今まで、たべたこともないような、おいしい果物や、それはそれは美しい花が、そこら一面にあって、きれいな小川が、さらさらと流れていました。
 私は、これまでのおそろしさも、つかれも忘れてしまって、凉しい木《こ》かげに休みました。
 あくる朝、散歩《さんぽ》かたがた、果物を取りに出かけました。そして、何だかあわれに見えるおじいさんが、小川のつつみに、じっとすわっているのに会いました。その人は、大そう年をとっているらしいのです。そして、さもさも弱っているようでした。私は大へんかわいそうになってしまいました。それで、
「もしもし、ここで何をしていらっしゃるのですか。難船《なんせん》でもなすったのですか。」
と、聞いてみました。
 けれども、そのおじいさんは、悲しそうに首をふっただけでした。そして、この小川を渡らせてくれと、手まねでたのみました。
 私は、きげんよく、よろしいと言って、しゃがんで、その人を肩ぐるまにのせました。おじいさんは、思ったよりも重うございました。
 私は小川を渡りました。それから、その人をおろそうとしました。するとどうでしょう、おじいさんは、おりようとはしないで、両方の足でますます私の首を強くしめていくのです。私は息《いき》ができなくなりました。そしてとうとう、あっと言ったきり気をうしなってしまいました。
 それからしばらくして、気がつきましたけれど、やっぱりおじいさんは、私の肩にまたがっていました。そして、やせてとがったそのひざで、私をうんうんつきはじめました。それがとても痛いのです。私はたまらなくなって、起きて、また歩きはじめました。そして、その人が行けという方へ行くよりほか、どうにもしようがありませんでした。
 それよりは、毎日々々、口では言えないほどの苦しみをしました。一分間も、へんなおじいさんは、私の肩からおりようとしないのです。私が寝ている時でも、そうなのです。そして、はじめのように、とがったひざで、うんうん私をついては、おっ立ててゆくのです。そして、自分はしょっちゅう、果物を取ってたべているのです。私も、もとより取ってたべました。そうしなければ、お腹《なか》がすいて、死んでしまいそうですからね。
 さて、ある日のこと、私どもは、大へんたくさんひょうたん[#「ひょうたん」に傍点]がなっているところへ来ました。そして、そのうちにたった一つ、中がからになって、ひぼしになっているひょうたんがありました。私はそれをとって、その中へ、ぶどうの汁《しる》をしぼりこみました。そして、日のよくあたりそうなところへ、ぶらさげておきました。
 それからまた、あちらこちらと歩きまわって、四五日たってから、ひょうたんのところへ行ってみますと、どうでしょう、おいしいおいしい、ぶどう酒《しゅ》ができているではありませんか。
 私は、大よろこびで、ぎゅうぎゅう飲
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