二|度《ど》めの航海《こうかい》の話《はなし》
家へ帰って、しばらくの間は、私も楽しくくらしていました。しかし、まもなく、私は、ぶらぶらとその日その日をおくることが、いやになりました。そして、海の上へ乗り出して、波の上をとぶように走ったり、帆づなをびゅうびゅううならせて吹いてゆく、風の音を聞いたりしたくて、たまらなくなりました。
そこで私は、いそいでいろいろの品物を買いあつめ、もう一度、外国へ商売《しょうばい》に出かけることにしました。
それから、つごうのよさそうな船に乗って、大勢の商人たちと一しょに、いよいよ二度めの航海に出かけました。
船は、みちみち、いろんな港につきました。私どもは、そのたんびに、持って来た品物を売って、大そうもうけました。そして、すっかり品物を売りはらってしまってから後のことでした。ある日のこと、私たちは、ある島につきました。
その島は、ほんとうに美しい島でした。エデンの園《その》かと思われるほど、きれいなところでした。たくさんの花が、にじ[#「にじ」に傍点]のように咲きみだれて、じゅくした果物が、おいしそうにふさ[#「ふさ」に傍点]になって、なっていました。
私は、まずこの木の下へどっかりとすわりました。そして、あたりを見まわしました。
そこら一面、見れば見るほど、美しゅうございました。私は、持って来た食べ物をたべたり、お酒を飲んだりしました。それから目をつぶりました。そばを、しずかに流れている、小川の流れの音が、歌のように聞えてきました。そのうちに、ぼーっとしてきて、私はねむってしまいました。
それから、いったい、どれだけ時間がたったのかわかりませんが、ふと目をさますと、一しょに来た人たちは、一人もいなくなっていました。びっくりして、海の方へさがしに行ってみますと、まあ、どうでしょう。船は、とっくに出てしまっているではありませんか。そして、はるか向うまで走って行って、ちょうど白い点を打ったように見えるだけであります。私は、この島におき去りにされてしまったのです。こんなことになるほどなら、どうしてあのまま、家にじっとしていなかったのかと、泣いて残念《ざんねん》がりましたけれど、仕方がありませんでした。
私は、どうにかして島から出て行くことはできないものかと思って、高い木にのぼって、方々を見まわしました。
はじめに海の方を見ました。けれども、海には何にもありませんでした。
それで、こんどは、陸《おか》の方を見ました。すると、島のまん中ほどに、大きな、白い、円《まる》屋根のようなものが見えました。今まで一ぺんも、そんなものを見たことがないので、それが何だか、ちっともわかりませんでした。
私は、ともかく、木からおりました。そして、大いそぎで、その白い円屋根の方へ走って行きました。
しかし、いよいよそばまで行っても、それはかいもく何だかわかりませんでした。ちょうど大きなまり[#「まり」に傍点]のようで、すべすべしていて、とても、よじのぼることなどできませんでした。また、それかといって、中へ入って行こうにも、戸らしいものや、入口らしいものが、一つもありませんでした。どうにもしようがないので、私はただ、ぐるぐるそのまわりをまわっていました。
すると、にわかに空がくもってきて、見る見る夜のように、まっ暗になってしまいました。
それで、おそるおそる空を見上げますと、大きな鳥がまいおりて来て、そのつばさのかげのために、こんなになったのだということがわかりました。鳥は、またたくまにおりて来て、白い円屋根の上へとまりました。
この時、ふと私は思い出したことがありました。それは、水夫たちに聞いていた、ロックという鳥のことです。それで、すべすべした円いまりは、その鳥の卵にちがいないと思いました。
こう思いつくと、すぐに私は、頭にまいていた布をといて、つなを作りました。そして、それを自分の腰のまわりにまわして、両方のはしを、しっかりとロックの足にむすびつけました。
「しめたぞ。この鳥は、今に、とび上るにちがいない。そして、きっと、私をこの島から、つれ出してくれるにちがいない。」私は、こうひとりごとを言って、よろこびました。
はたして、まもなく、私は地から持ち上げられました。そして、雲にとどくかと思うまで高くのぼってしまいました。それからまた、だんだん下へおりてゆきました。そして、地につきました。私は手早く、ずきんの布をときました。そしてロックからはなれました。
ロックにくらべると、私はお話にならないほど、小さいものでした。それでロックは、まるきり私に気がつかなかったらしいのです。ロックはすぐに、そばに寝《ね》ていた大きな黒いものの方へとびかかってゆきました。そして、それを口ばしでくわ
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