シムの家の戸をたたきました。すると、モルジアナという女どれい[#「どれい」に傍点]が出て来ました。この女はカシムの召使《めしつかい》の中でも、一番りこう者でありました。
 アリ・ババはモルジアナを招《まね》いて、その耳に口をつけて、
「お前のご主人はね、どろぼうに切りきざまれて殺されてしまったのだよ。けれども、だれもまだこのことを知っている人はないのだからね、お前これを、だれにも知らさないですますような工夫《くふう》をしておくれ。」
と、たのみました。
 それから、アリ・ババは家の中へ入って行って、カシムのおかみさんに、いっさいの話をして聞かせました。
「けっして、悲しんではいけませんよ。これからは私たちと一しょにくらしましょう。私たちの宝物も分けてあげましょう。私たちはよく気をつけて、このことを、人にさとられないようにしましょうね。」
と、約束しました。
 それから、切りきざまれた、かわいそうなカシムを、ろばからおろして、となり近所の人々には、ゆうべ急病で死んだと言っておきました。
 モルジアナは、だいぶはなれた町の、おじいさんのくつ[#「くつ」に傍点]屋をたずねて行きました。そして
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